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川崎重工:北米の鉄道事業における新規ビジネスモデル創造


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概要

川崎重工業株式会社 (以下、川崎重工) は、北米で展開する鉄道事業において、軌道メンテナンス業務の再設計による新たなビジネスモデル構築を推進しています。


インパクト

ハードウェアとソフトウェアを組み合わせたインテリジェントプロダクトを通じて、新たな収益源の確立に向けた提供価値の創造を実現


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事業運営の効率とスケーラビリティの課題

米国は世界最大の鉄道網を持ち、約13万マイル(約21万キロメートル)の線路があります。この広大な土地に広がる鉄道網の保線業務は非常に困難であり、その結果、年間1,000件以上の列車事故が発生し、貨物や旅客サービスに支障をきたしています。

対照的に、日本の鉄道網は安全性の国際基準を設定しており、線路検査における高い技術力で知られています。川崎重工は既に北米に鉄道車両を供給しているため、米国の鉄道会社向けに軌道メンテナンス支援サービスを提供する機会を見出しました。

アナログ業務の非効率さ

歴史的に、軌道検査は労働集約的なプロセスでした。貨物輸送を中断させる、検査専用の車両を運行する必要がありました。また、検査員は、目視で軌道、留め具、枕木、バラストの小さな欠陥を認識するための高度な訓練を受ける必要があります。安全規則に従い、検査結果を詳細に記録することも求められます。そのため、従来の軌道検査は手作業かつ効率性が低い業務でした。

川崎重工も同様の課題に直面していました。同社の成長は、デジタルプロダクトやサービスとは異なり、スケールが困難な物理的製品の提供に制約されていました。保線技術を革新し、拡張することは、川崎重工とその顧客にとって新たな可能性の領域をもたらします。


私たちはビジネスモデルを変革しようとしています。
ハードウェアビジネスは一回限りのビジネスですが、ソフトウェアとデジタル技術は持続可能なビジネスなのです。

根木 良二

川崎重工業株式会社 | Kawasaki Track Maintenance Platform - Product Owner


デジタル未来の先駆者としての利点

川崎重工は統合ソフトウェアの最初のステップとして、エッジでのAI/MLを活用し、デジタルカメラ、レーザー、ジャイロセンサーなどのIoT軌道検査デバイスと連携するデジタルプラットフォームを開発しました。このプラットフォームはクラウドを活用して鉄道データを収集・分析し、エッジ上でのMLモデルを自動的にトレーニングして改善します。

このプラットフォームを採用した鉄道会社は、安全性と効率の向上、検査コストの削減を実現できます。センサーデータと鉄道スタッフの現場知識を結びつけることで、自動化を推進する中でも貴重な人的資源を活用することができます。

この鉄道データプラットフォームは、川崎重工にとって数千万ドル規模の新しい収益源となります。このデジタル戦略がロボティクスや水素など他の事業分野にも実施されることで、さらに大きな成長の可能性が広がります。

この取り組みを推進するため、川崎重工は新たにアジャイルエンジニアリングチームを設立しました。ソフトウェアエンジニアが0人だった企業において、現在は12〜15人のチームが形成され、実際に動作するソフトウェアを提供しています。川崎重工は、この能力によりデジタルファーストの未来に向けてより強靭な事業基盤を整備しています。

インテリジェントプロダクトの変革的な影響

では、川崎重工はどのようにこの取り組みを進めたのでしょうか。初めに、川崎重工のコアメンバーがシアトルのSlalomオフィスを訪れました。ここで、鉄道事業の顧客と川崎重工に価値を創造するプロダクトビジョンを策定するためのディスカバリーフェーズを一緒に進め、実現可能な範囲を定めました。

川崎重工は、鉄道軌道の三次元的な位置の異常を検出するセンサーを使用した「Geometryシステム」によって、変革の大きな一歩を踏み出しました。このシステムは既に商業的に利用可能であり、川崎重工の全体戦略の重要な柱となっています。

このアジャイル開発は、川崎重工とSlalomのメンバーが日本と米国の両国で協働して進められ、プラットフォームの追加コンポーネントを開発しました。ハードウェアとソフトウェアの専門家が連携し、戦略的および技術的な課題の解決に取り組んでいます。

次に開発された「Fastenerシステム」は、コンピュータービジョンを利用して、軌道を枕木に固定するスパイクやクランプ、クリップなどの留め具を検査します。エッジデバイス上で動作するソフトウェアは強力な画像認識を行い、鉄道の規則や連邦鉄道局の規則と比較して欠陥を検出します。その後、そのデータをクラウドに送信し、欠陥リストを作成することで、顧客が軌道の状態を把握できるようにします。

もう一つの画期的なコンポーネントである「Maintenance Advisor」は、AIと機械学習(ML)を使用して修理の必要性をまとめ、鉄道システムへのコストと影響を最小限に抑えた最適なメンテナンスルートを計画します。このコンポーネントは、大量のデータをスマートで実行可能な指示に変換し、修理作業の効果を最大限に高めることで、インテリジェントプロダクトの力を発揮します。


「Slalomのビジネスモデルには感銘を受けました。他のソフトウェア会社は製品を構築するだけですが、Slalomはスキルトランスファーやチームビルディングも行います。
これが、米国で第三者に頼らず事業を拡大するために重要だったため、Slalomを選びました。」

根木 良二
川崎重工業株式会社 | Kawasaki Track Maintenance Platform - Product Owner


川崎重工とSlalomは、文化的および言語的な違いを乗り越える中で課題に直面しましたが、協力し合い、お互いから学ぶことで大きな価値を見出しました。川崎重工のエンジニアは、自分たちのスキルを拡張し、アジャイルプラクティスを川崎重工の文化に適応させる絶好の機会を認識しています。

また、Union PacificやBNSF Railwayのような初期の顧客が軌道メンテナンスソリューションを現場でテストし、性能とコスト削減の結果を確認する中で、川崎重工がこれらの初期の取り組みをさらに拡大する道が開かれています。

本プロジェクトを通じて、川崎重工は世界クラスのハードウェアを付加価値の高いソフトウェアソリューションで補完するスキルを有することで、新たな競争優位を確立する変革への道を切り開いています。


日本のチームビルディングの方法は米国とは大きく異なります。
通常、日本のチームは似たような経験を持つ人々で構成されます。
しかし、Slalomに来たとき、必要なときに異なる専門知識を持つ人々がチームに貢献することを学びました。これは非常に目を見開かされる経験でした。

間瀬 祥平

川崎重工業株式会社 | Lead Technical Owner


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