顧客起点の製品開発プロセス
製造業において競争優位を確立するためには、顧客中心主義を商品開発プロセス全体に組み込む必要があります。この顧客中心主義は特定のプロセスに捉われず、従業員、パートナー、プロセス、機械、データ、そして顧客を繋ぐエンドツーエンドのエコシステムに組み込まれる必要があります。最新テクノロジーを導入することも重要ですが、それは全体の一部に過ぎません。
顧客中心主義を浸透させるには
今、製造業や自動車業界では根本的な変化が起きています。かつては、顧客との関係はパートナーや代理店が担い、メーカーは製品作りに重点を置いていました。現在では、顧客体験 (CX) は製造する製品と同じくらい重要であり、ビジネスを遂行する上で最優先事項の1つとして取り扱う必要があります。
変化する環境に適応するため、企業はビジネスプロセスを再設計して顧客体験の向上に注力する必要があります。製品開発からアフターサービスサポートまで、付加価値をもたらす体験を常に中心に据えることが肝要です。調査によると、86%の消費者が優れた顧客体験と高い透明性のためにより多くの料金を支払う意思があるとされています。
では、製造業や自動車業界の企業にとって「顧客体験」とは何を意味するのでしょうか。従来、多くの企業は機能別組織であったため、優れた顧客体験は管轄外のもの、つまりサイロ化された別組織のものだと考えがちでした。しかし、サイロ化した従業員やチームにおいては、顧客の視点から全体像を把握することができません。カスタマージャーニに焦点を移すことで、企業は顧客のペインポイントを発見し、解決することが可能になります。
多くの企業は、これらの問題を解決するためにデジタルを活用したビジネストランスフォーメーションを推進しています。特に、COVID-19の影響によりオンライン体験の向上が喫緊の課題となっているため、各企業は顧客をより深く理解し、セールスとサービス全体でオペレーションを効率化することに努めています。これは、成熟度に応じてデジタルを駆使した抜本的な変革を必要とします。
真の顧客中心戦略の実現は、組織全体の取り組み
現在の戦略を再考してみましょう。製造業を取り巻く状況は変化しており、ビジネスモデルの再設計による新たな収益拡大が求められています。顧客中心のジャーニーを構築しても、組織全体がそれを受け入れなければ価値をもたらすことができません。このカスタマージャーニーには、トップダウンとボトムアップの双方の参画が必要です。顧客との新たな接点を構築し、期待値を上回ることは、特定の部署の役割ではなく、組織全体の取り組みです。同様に、新たなテクノロジーへの投資も、サイロ化された環境においては効果がありません。
デジタルファクトリー
競争優位を高めるためには、データ活用による運用効率の継続的な最適化、バリューチェーンの実現、そしてテクノロジーに依存しないビジネス主導のアプローチによる製造工程の改善を通じて、工場のデジタル化を進める必要があります。具体的には、以下の技術を活用することで、デジタル化をさらに加速させることができます。
- デジタルツイン: 実際の資産をデジタルデータで表現することで、設備の状態を可視化し、故障予測や予防保全が可能になります。
- センサーネットワーク: 機械やロボットにセンサーを設置することで、稼働状況や異常をリアルタイムで収集し、予知保全や故障診断に役立てることができます。
- クラウドロボティクス: クラウド上のAIを活用することで、ロボットを遠隔操作したり、作業を自動化したりすることができます。
- 遠隔品質検査: 画像認識技術を用いて、製品の品質を遠隔で検査することができます。
これらを単独で導入するだけでなく、互いに連携させることで、デジタル化によるインパクトをもたらすことができます。また、単なるコスト削減や効率化にとどまらず、新たなビジネスモデル創造にもつながります。
データドリブン製造の加速
機械からサプライチェーンまで、データはあらゆる場所に存在します。ボストン コンサルティング グループが行った最近の調査によると、製造業の幹部の約72%が、データと高度な分析は3年前よりも重要性が高まっていると考えています。特に、異なるソースからのデータを組み合わせることで、より全体像を把握するようになるなど、大きな変化が起きています。製造業にとってのデータソースは、物理的な資産、工場、販売、サービス、サプライチェーンなどであり、これら全てを活用して組織全体でよりデータドリブンな文化を構築し、様々なシステムに埋もれている莫大な資産を掘り起こすことが重要です。オペレーション改善、顧客体験の向上、環境・社会への影響など、様々なユースケースが考えられます。
カスタマー360°
多くの製造業の企業は、営業とサービスのやり取りを統合し、在庫の統一されたビューをチャネルと顧客の両方に提供しています。以前は社内の知識として存在していたものをデジタル化し、集中管理されたアカウント管理へと移行しています。先進的な企業は、バリューチェーンの上流に位置する収益性が高い製品を開発すると同時に、これらの製品を中心とした新しいサービスを提供し、「Products as a Service (PaaS)」を推進しています。
サプライチェーン最適化
従来のサプライチェーンは、プロセス全体でデータが統合されていないことが少なくありませんでした。しかし、サプライチェーンリーダーにとって最大の課題は、コスト削減と効率化です。COVID-19をきっかけに、製造業の企業はよりレジリエントなサプライチェーンネットワークを構築しようとしています。多くの企業はサイロを打破し、サプライヤーにエコシステムを開放し、クラウド、IoT、ML/AI、ブロックチェーンなどのテクノロジーを活用して、より能動的なオペレーションへと移行しています。
チェンジマネジメントとカルチャー・トランスフォーメーション
現在、製造業のCEOが最も重視しているトピックの一つは、新しいやり方を組織内に浸透させるためのチェンジマネジメントの推進です。製造業における変革を受け入れ、新しいPaasオファリングを立ち上げるには、組織文化の変革が必要です。優れたPoCでも、変化に対する抵抗感により実用化されないことが少なくありません。データ駆動型かつ顧客中心のモデルを定着・浸透させるためには、組織全体でアジャイルなチェンジマネジメントとカルチャー・トランスフォーメーションが必要です。
最初の一歩が重要
顧客中心の企業への変革は容易ではなく、1ステップずつ進めることが肝要です。Slalomは、世界および日本で培った経験と知見をもとに、将来の実現に向けたディスカッションからご支援します。